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2025.03.23

【池袋でインプラントを長持ちさせるために】骨吸収・インプラント周囲炎を考えた治療設計

「インプラントは何年くらいもちますか?」

「せっかくインプラントを入れるなら、できるだけ長く使いたい」

インプラント治療を検討されている患者さんから、よくいただく質問です。

インプラントを長期的に安定させるためには、単に「インプラントが骨とくっついた」だけでは十分ではありません。

私たちが重要だと考えているのは、

インプラントを骨の中に適切に配置し、その周囲を十分な骨と軟組織で守り、さらに患者さん自身が清掃しやすい被せ物をつくること。

つまり、

骨による支持と硬組織の安定
+
厚みと高さのある軟組織による生物学的バリア
+
清掃しやすい補綴物
+
継続的なメインテナンス

です。

グランドメゾンデンタルクリニックでは、この考え方を実現するための一つの指標として、Tomas Linkevičius先生が提唱するZero Bone Loss Concepts(ゼロボーンロスコンセプト)をインプラント治療に取り入れています。

Zero Bone Loss Conceptsとは?

Zero Bone Loss Conceptsとは、その名前の通り、インプラント周囲の骨吸収を可能な限り抑え、長期的に骨と軟組織を安定させることを目指した治療コンセプトです。

ただし、「Zero Bone Loss」という名前だからといって、

「骨が絶対に1mmも減らない」

ことを保証する治療法ではありません。

重要なのは、骨が減ってから対処するのではなく、

なぜインプラント周囲の骨が変化するのかを考え、埋入する段階から骨・軟組織・補綴物の位置関係を設計する

という考え方です。

その中心となるのが、

  1. インプラントを三次元的に適切な位置へ埋入する
  2. インプラント‐アバットメント接合部と骨との位置関係を考える
  3. インプラント周囲に十分な骨を確保する
  4. 十分な厚みと高さを持つ軟組織環境をつくる
  5. 清掃しやすい被せ物を設計する

という考え方です。

なぜインプラント周囲の「骨」が重要なのか?

インプラントは顎の骨に埋入され、骨と直接結合することで噛む力を受け止めます。

この状態をオッセオインテグレーションと呼びます。

そのため、インプラントを長期的に機能させるうえで、インプラント周囲に安定した骨が存在することは非常に重要です。

骨はインプラントを支える「土台」

天然歯には歯根膜がありますが、インプラントには歯根膜がありません。

インプラントに加わった咬合力は、インプラント体から周囲骨へ伝達されます。

つまり周囲骨は、インプラントを物理的に支える重要な組織です。

だからこそ、

「インプラントが骨に入っている」だけではなく、「インプラントの周囲にどのような骨が存在しているか」

まで考える必要があります。

インプラントの外側にも十分な骨を残す

特に重要なのが、インプラントの頬側に存在する骨です。

インプラントの外側の骨が非常に薄い場合、治癒過程でより大きな形態変化が生じ、骨の高さの変化や粘膜退縮につながる可能性があります。

そのため当院では、

「骨がある場所にインプラントを入れる」のではなく、最終的な歯の位置から逆算してインプラントを入れ、その周囲に安定した骨環境を確保できるか

を考えます。

必要であればGBR(骨造成)などを併用することもあります。

骨には「支持」だけでなく、その内側にインプラントを置く意味がある

インプラント周囲の骨を考えるとき、単に「骨量が多い方が強い」と考えるだけでは十分ではありません。

重要なのは、インプラントを骨の輪郭の中へ適切に配置することです。

インプラントが骨の外側へ偏位し、頬側の骨が極端に薄くなれば、その部分の硬組織・軟組織が不安定になる可能性があります。

反対に、適切な位置にインプラントを配置し、その周囲に骨が存在する状態をつくることで、

咬合力を受け止める支持組織としての役割と、インプラント周囲の軟組織を支える土台

を確保することにつながります。

これが、当院が「インプラントを入れる位置」にこだわる理由です。

もう一つ重要なのが「細菌との距離」です

インプラント治療では、口腔内の細菌と骨との位置関係も考える必要があります。

インプラントの被せ物とインプラント体の間には、インプラント‐アバットメント接合部があります。

この接合部には非常に微細な隙間、いわゆるマイクロギャップが存在します。

そのため、インプラント周囲組織を考える際には、

この接合部を骨頂に対してどこへ配置するのか

が重要になります。

なぜインプラントを深く埋入することがあるのか?

Zero Bone Loss Conceptsで特徴的なのが、軟組織の厚みとインプラントの埋入深度を一緒に考えることです。

軟組織が薄い状態で、インプラント‐アバットメント接合部が骨に近すぎる位置に存在すると、インプラント周囲に必要な軟組織の高さを形成する過程で、骨のリモデリングが起こる可能性があります。

そこで症例によっては、

インプラントを適切な深度に埋入し、接合部と骨頂との間に距離を確保するとともに、その上に十分な高さの軟組織が形成できる環境を設計する

という考え方を取ります。

ただし、

「インプラントは深く入れれば入れるほど良い」

という意味ではありません。

深すぎる埋入は補綴物の清掃性など別の問題につながる可能性があります。

重要なのは、骨、軟組織、インプラントの形状、補綴物を考慮して、適切な深度を決めることです。

骨の上には「歯肉の防御壁」が必要

ここがZero Bone Loss Conceptsを理解するうえで、もう一つ非常に重要なポイントです。

インプラントが骨にしっかり囲まれていても、それだけで口腔内細菌から守られているわけではありません。

口の中には常に多数の細菌が存在しています。

その口腔内環境とインプラント周囲骨の間に存在するのが、インプラント周囲の軟組織です。

インプラント周囲の歯肉は「生物学的バリア」になる

インプラント周囲では、粘膜が治癒する過程で、

上皮性付着と結合組織性の領域

からなる軟組織の封鎖が形成されます。

これは、口腔内環境とその下にあるインプラント周囲組織を隔てる生物学的バリアとして機能します。

簡単にいうと、

口の中
↓
細菌・プラーク
↓
インプラント周囲の軟組織
――――――――
骨
↓
インプラント

という位置関係です。

この軟組織のバリアが安定して存在することが、インプラント周囲組織を考えるうえで重要です。

天然歯よりも軟組織の防御は弱い

ここは非常に重要です。

天然歯の周囲では、歯根表面のセメント質に結合組織線維が入り込み、歯を取り囲む歯周組織が形成されています。

一方、インプラントには天然歯と同じ歯根膜やセメント質はありません。

インプラント周囲の結合組織線維の走行も天然歯とは異なります。

つまり、

インプラント周囲の軟組織にも防御機構はありますが、天然歯と全く同じ構造・抵抗性ではありません。

だからこそ、インプラントでは最初から安定した軟組織環境をつくることが重要だと考えています。

なぜ「厚い歯肉」が重要なのか?

Zero Bone Loss Conceptsでは、軟組織の厚みを非常に重視します。

インプラント周囲には、一定の高さを持った軟組織性の付着・封鎖が形成されます。

軟組織が十分に確保されていれば、インプラント‐アバットメント接合部と骨との間に軟組織の領域を形成しやすくなります。

一方で軟組織が薄い場合には、必要な軟組織の高さを獲得する治癒過程で、辺縁骨のリモデリングが生じる可能性が指摘されています。

そのため、

骨だけを見るのではなく、その骨の上にどのくらいの厚み・高さの軟組織を確保できるのか

まで考えることが重要です。

「厚み」と「高さ」の両方を見る

インプラント周囲の軟組織では、

横方向の厚み

だけでなく、

骨頂から口腔内までの垂直的な高さ

も重要です。

この軟組織領域が、インプラントと口腔内との境界部分を形成します。

当院では、

骨でインプラントを支え、その上に十分な軟組織のバリアを確保する

という二段階の考え方を重視しています。

CTGで軟組織を厚くする

軟組織が薄い場合には、症例に応じてCTG(結合組織移植術)を検討します。

口蓋から結合組織を採取して移植し、

  • 軟組織の厚みを増やす
  • インプラント周囲の組織形態を改善する
  • 審美領域でのボリュームを確保する

ことなどを目的とします。

ただし、すべてのインプラントにCTGが必要なわけではありません。

もともとの軟組織の厚みや部位、審美性、インプラントの位置などから適応を判断します。

角化粘膜も重要

軟組織についてもう一つ考えるのが、角化粘膜です。

十分な角化粘膜がない場合でもインプラントが必ず失敗するわけではありません。

しかし、角化粘膜が少ないことで、

  • ブラッシング時に痛い
  • 粘膜が動いて清掃しにくい
  • プラークコントロールが難しい

といった問題が生じる場合があります。

このようなケースでは、必要に応じて**FGG(遊離歯肉移植術)**などを検討します。

CTGとFGGは同じ「歯肉移植」でも目的が異なります。

CTG=主に軟組織の厚み・ボリューム

FGG=主に角化粘膜の幅・清掃環境

と考えると分かりやすいでしょう。

骨と歯肉の「二重の防御」を考える

当院のインプラント治療で重視している考え方を、患者さん向けに簡単にすると、

インプラント
↓
周囲骨による支持と硬組織の安定
↓
その上を覆う厚み・高さのある軟組織による生物学的バリア
↓
清掃しやすい被せ物
↓
口腔内

という構造をできるだけ整えることです。

骨はインプラントを力学的に支持し、軟組織は口腔内環境とその下の組織を隔てる生物学的バリアとして働きます。

どちらか一方だけではなく、

「骨+軟組織+補綴」

を一体として設計することが重要です。

プラットフォームスイッチングで骨との距離を考える

インプラントの構造にも、周囲骨の安定を考えた工夫があります。

その一つがプラットフォームスイッチングです。

これは、インプラント体の外径よりも内側にアバットメントとの接合部を設定する構造です。

これによって、インプラント‐アバットメント接合部をインプラント外周の骨から水平方向に離すことができます。

臨床研究でも、プラットフォームスイッチングは辺縁骨レベルの維持に関連する可能性が報告されています。

ただし、これも単独で骨吸収を防ぐ「魔法の構造」ではありません。

埋入位置、埋入深度、軟組織、補綴設計などと組み合わせて考えます。

当院の症例|骨と軟組織でインプラントを守る

アバットメントを外した状態

この写真は、インプラントのアバットメントを外した際のインプラント周囲粘膜です。

当院で埋入したインプラントでは、周囲に十分な軟組織の厚みと高さが確認できます。

この軟組織は単なる「見た目の歯肉」ではありません。

口腔内環境と、その下に存在するインプラント周囲骨との間に位置する重要な生物学的バリアです。

右の1本が当院で入れたインプラント

一番右が当院で埋入したインプラントです。

この症例では、インプラント‐アバットメント接合部と骨頂との位置関係を考えて埋入深度を設定し、経過時にも周囲骨の安定した状態が確認されています。

他のインプラントとの違いも確認できますが、インプラントの種類、埋入時期、治療条件などが異なるため、単純に優劣を比較できるものではありません。

この症例で見ていただきたいのは、

インプラント体だけではなく、骨・軟組織・接合部の位置関係まで含めて治療を設計している

という点です。

インプラント周囲炎を「構造」から考える

インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の炎症に伴って支持骨の進行性喪失を認める病態です。

インプラント周囲炎の原因を一つに限定することはできません。

プラークを中心として、

  • 歯周病の既往
  • 喫煙
  • 清掃状態
  • メインテナンス
  • 補綴物の形態
  • インプラントの位置
  • 周囲組織の状態

など複数の要因が関係します。

したがって、

「厚い歯肉を作ればインプラント周囲炎にならない」

「Zero Bone Lossなら周囲炎にならない」

ということではありません。

しかし、インプラント周囲に安定した骨と軟組織をつくり、清掃しやすい補綴形態にすることは、長期管理を考えるうえで重要です。

インプラントを長持ちさせる治療は、手術前から始まっている

インプラントの長期予後は、手術後のメインテナンスだけで決まるものではありません。

私たちは、

どこにインプラントを入れるか

だけではなく、

どこに骨を残すか・つくるか

どの位置にインプラント‐アバットメント接合部を置くか

その上にどの程度の軟組織を確保するか

どのような形の歯を作れば患者さん自身が磨けるか

まで、手術前から考えます。

つまり、

インプラントを長持ちさせるための治療は、インプラントを入れた後ではなく、入れる前の治療設計から始まっています。

「どのインプラントを使うか」だけでは決まらない

現在はさまざまな優れたインプラントシステムがあります。

しかし、同じインプラントを使用しても、

  • 埋入位置
  • 埋入角度
  • 埋入深度
  • 周囲骨
  • 軟組織
  • 被せ物
  • 噛み合わせ
  • 清掃性

によって、治療後の環境は変わります。

そのため当院では、

「何を使うか」だけではなく、「どのように診断し、どのように治療設計するか」

を大切にしています。

よくある質問

Zero Bone Lossなら骨は絶対に減りませんか?

いいえ。

Zero Bone Loss Conceptsは、骨吸収を完全にゼロにすることを保証する治療法ではありません。

インプラント周囲の骨・軟組織・補綴物などを総合的に設計し、辺縁骨をできるだけ安定した状態に維持することを目指す考え方です。

インプラントは深く入れた方が長持ちしますか?

一概にはいえません。

軟組織の厚みやインプラントのデザイン、最終補綴物などによって適切な埋入深度は異なります。

深ければ深いほど良いわけではありません。

インプラントの周りには骨が厚い方がいいですか?

周囲骨の状態は重要です。

特に頬側骨が非常に薄い場合には、治癒に伴う骨・軟組織の形態変化が大きくなる可能性があります。

ただし「○mm以上なら絶対に安全」という単純な基準だけで判断するものではありません。

歯肉が厚ければインプラント周囲炎になりませんか?

厚い軟組織だけでインプラント周囲炎を防げるわけではありません。

プラークコントロール、歯周病の既往、喫煙、補綴形態、メインテナンスなども重要です。

軟組織は、それらとともに長期的なインプラント周囲環境を考える重要な要素の一つです。

インプラント周囲の歯肉は細菌を防いでいるのですか?

インプラント周囲には上皮と結合組織からなる軟組織性の封鎖が形成され、口腔内環境とその下の組織を隔てる生物学的バリアとして機能します。

ただし天然歯の歯周組織と全く同じ構造ではなく、適切な清掃とメインテナンスが必要です。

池袋で長期予後を考えたインプラント治療を

インプラント治療では、

「インプラントを入れること」そのものをゴールにしないこと

が重要だと考えています。

私たちが目指しているのは、

適切な位置にインプラントを置き、
その周囲を骨で支え、
さらにその上に厚みと高さのある軟組織のバリアをつくり、
患者さん自身が清掃できる歯をつくること。

そして、その状態をメインテナンスによって長期的に管理していくことです。

これがグランドメゾンデンタルクリニックが考える、インプラントを長持ちさせるための治療設計です。

関連ページ

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この記事の監修

グランドメゾンデンタルクリニック
歯科医師 生野 誠

2014年 九州歯科大学卒業。
慶應義塾大学病院 歯科・口腔外科にて研修。
日本口腔外科学会 認定医。

インプラントだけを見るのではなく、骨、軟組織、歯周組織、補綴、咬合、残存歯まで含めた治療設計を重視しています。

参考文献

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Linkevicius T, Apse P, Grybauskas S, Puisys A. The influence of soft tissue thickness on crestal bone changes around implants: a 1-year prospective controlled clinical trial. Int J Oral Maxillofac Implants. 2009;24(4):712-719.

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